歴史ある西尾市には、伝統的な食文化も多く受け継がれています。
今回は「醸造」をキーワードに、後世に語り継がれる伝統味をご紹介。
すずみそ3代目の鈴木茂さんは、味噌職人としての天性を発揮して「手作り」「無添加」にこだわった味噌作りを続けています。
三河湾を望む漁師町が生み出した独特の製法を貫き、伝統的な食文化を支えるすずみそを訪ねました。
素材本来の旨味を引き出す
豆味噌は、蒸した大豆を玉にして、表面を麹につけ発酵させる製法が一般的です。しかし、すずみそでは蒸した大豆を玉にせず、大豆の粒のまま麹をつけて発酵させる「バラ麹」という製法でさっぱりとした味噌に仕上げています。
「味噌は長い年月をかけるほど濃厚になります。バラ麹は熟成期間が短いので淡泊な味噌ができるんです。幡豆地区は、三河湾から新鮮な魚介類が豊富にあがってくるので、それらの味を引き立てる味噌作りが生まれました」
食材を生かすための味噌ですが、すずみそ自体も無添加で大豆本来の旨みがぎゅっと詰まった味わいです。
「問屋さんに『すずみそは安く売る商品ではないですよ』と言われた時は嬉しかったですね」
この言葉にこそ鈴木さんが作り出す味噌の真価が表れています。
昔ながらの「本物の味」を守りたい
味噌作りの中で、鈴木さんが一番大事と語るのは大豆を炊く工程です。豆をふっくらと炊き上げるために、大豆を水に浸す時間やその温度調整に気を配ります。昔ながらのシンプルな製法だからこそ、日々の気候から影響を受けやすく、これまでの経験と勘を頼りにする部分も多くあります。
それでも、鈴木さんが「手作り」にこだわる理由とは?
「出来るだけ機械を通さないようにしているのは、やっぱりその方がおいしいからです。発酵方法も熱処理の仕方も、手早くできるやり方はたくさんありますが、出来上がりのおいしさを比べるとその差は歴然だと思います」
昔ながらの本物の味を守り続けること。それが自身の使命だと鈴木さんは考えています。
鈴木さんが選ぶオススメの逸品
町おこしの一環で、アサリの味噌焼きを商品化した際に作った味噌ダレです。
材料は尊皇蔵元の日本酒、相生ユニビオの本みりん、そしてすずみそと上白糖の4つのみ。西尾の本物尽くしにこだわった自慢の逸品です。
幡豆の夏を盛り上げる「はずストーンカップ」。実は鈴木さん、20年以上前にストーンカップを立ち上げたメンバーのひとり。
全国的にも珍しい海でのいかだレースを、幡豆の夏の風物詩となるまで成長させた立役者です。