歴史ある西尾市には、伝統的な食文化も多く受け継がれています。
今回は「醸造」をキーワードに、後世に語り継がれる伝統味をご紹介。
明治36年の創業から酒造り一筋に歩んできた尊皇蔵元は、少数精鋭の職人の手によって確かな味を守り続けています。
数々の受賞歴を裏づける、並々ならぬ酒造りへのこだわりについて、専務の山崎裕正さんに話を伺いました。
愛知県の素材で醸しあげる自慢の酒
尊王蔵元が酒造りに使用する酒米は、95%以上が愛知県産米です。地元産へのこだわりは、前社長の強いこだわりでもありました。
「酒米と言えば兵庫県の山田錦が主流ですが、前社長の『愛知県で作られた上質な酒米の特性を生かした酒造りをしよう』という信念を、今は私たちが受け継いでいます」
地域に根ざした造り酒屋として、この信念を象徴するエピソードがあります。
幡豆が誇る天下の奇祭、鳥羽の火祭りを冠した酒を造ることになったとき「地元の鳥羽で酒米を作ってもらい、その米で酒を造ろう」と酒米造りから取り組みました。
これを機に、鳥羽地区での契約栽培をスタート。
現在も当地区では優れた酒米が栽培されており、尊皇蔵元の酒造りを支えています。
丁寧な酒造りを礎に
おいしい酒をお客様にお届けするために、尊皇蔵元では手間と時間を惜しまない酒造りを行っています。
今では希少な自社精米もその工程のひとつです。
「酒米はとてもデリケートなので、じっくり時間をかけて丁寧に精米します。いい精米ができてこそ、酒のおいしさを決めるいい麹ができるんです」
酒の味や香りを守りながら、1本1本手作業でラベルを貼り仕上げていきます。一方、酒造りの技術向上をめざす試験醸造にも積極的に取り組んでいます。
「夢吟香 DREAM」は7回の試験製造を経て生まれました。
「これからも愛知県産の酒米にこだわり、新商品を打ち出していきたいですね」
伝統を守り、進化しながら、尊皇蔵元は歩み続けます。
山崎さんが選ぶおススメの逸品
一大ブームとなった焼酎に負けない濃厚な酒を求めて開発されました。
「二割二部 奥」は酒米を極限まで精米し、玄米の22%のみを使用。とても細かい米粒に合わせた「奥」専用の設備で丹念に作られています。
公に告知してはいませんが、尊皇蔵元ではいつでも蔵見学が可能です。酒作りのDVDを見てから見学がスタート。運が良ければ搾りたての酒を試飲できるかもしれません。職人魂あふれる酒造りを肌で感じてみては?